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緑内障の治療は「点眼を増やす」が正解?

おしらせ

【結論】緑内障治療は、ただ目薬を増やせばよいわけではありません。

緑内障では、眼圧だけでなく、OCTによる視神経の変化を総合的に評価します。

視野検査やこれまでの進行速度も考慮し、治療を強化するタイミングを判断します。

点眼薬の追加だけでなく、SLT(レーザー治療)や手術も含め、適した治療を選択します。


緑内障の治療で最も大切なことは、将来の視野をできるだけ長く保つことです。

そのため、眼圧を下げることは非常に重要です。

「眼圧が少し高いから、点眼をもう1本追加する」

ということを繰り返せばよいわけではありません。

緑内障では、治療を強化するタイミングと、その方法を慎重に考える必要があります。

医師紹介
当院では岐阜県眼科医会理事を務める眼科専門医を含む医学博士2名体制です。大人から子供までの眼鏡、コンタクトレンズ処方などの一般的な治療から、緑内障や網膜疾患、神経眼科など専門的な知識を備え長年地域のかかりつけ眼科として診療を行っております。白内障手術はもちろん、網膜・緑内障に対するレーザー治療などにも対応いたします。
緑内障
緑内障は日本人の中途失明原因第1位の疾患です。開放隅角と閉塞隅角に分けられ、日本人に特に多い「正常眼圧緑内障」は、眼圧が正常でも進行します。岐阜市加納の窪田眼科では視野・OCT検査による早期発見に加え、SLTレーザーや手術治療にも対応。40歳を過ぎたら一度眼科検査をおすすめします。

眼圧を下げることは、緑内障の進行を抑える

緑内障では、眼圧を下げることで視野障害の進行を遅らせられることが、多くの研究で確認されています。

代表的な研究であるEarly Manifest Glaucoma Trial(EMGT)では、眼圧を平均約25%下げた治療群では、治療を開始しなかった群と比べて緑内障の進行が少なくなりました。

つまり、

「眼圧を適切な範囲まで下げる」ことは、緑内障治療の基本です。

しかし、ここで重要なのは、

「眼圧を下げれば下げるほどよい」という単純な話ではない

ということです。

患者さんによって、目標とする眼圧は異なります。

緑内障の進行度、現在の視野、視神経の状態、年齢、眼圧の変化、これまでの進行速度などを総合して、その人に合った「目標眼圧」を考える必要があります。

「今日の眼圧」だけで治療を決めない

緑内障の診察では、眼圧の数字は非常に重要です。

しかし、眼圧は一日の中でも変動します。

例えば、ある日の診察で眼圧が18mmHgだったとしても、その数字だけを見て、

「18mmHgだから治療が不十分だ」

と判断することはできません。

逆に、眼圧が一時的に低かったからといって、

「これで緑内障は安心」

とも言えません。

重要なのは、

眼圧がどの程度で推移しているのか

そして、

その眼圧で視神経や視野が安定しているのか

を見ることです。

実際、AGISやEMGTなどの長期研究でも、眼圧と緑内障の進行には関係があることが示されていますが、治療の判断は一回の眼圧値ではなく、長期間の経過を見ながら行うことが重要です。

点眼を1本、2本、3本……と増やしていけばよい?

ここが、緑内障治療で非常に重要なところです。

眼圧が目標値に達していなければ、点眼薬を追加することはもちろん選択肢になります。

しかし、

「眼圧が高い→点眼を追加する」

だけを繰り返すことには限界があります。

点眼薬が増えるほど、

  • 点眼する回数が増える
  • 点眼を忘れやすくなる
  • 点眼が難しくなる
  • 目の乾燥や充血などの副作用が増える
  • 防腐剤による眼表面への負担が増える
  • 患者さんの治療に対する負担が大きくなる

といった問題が起こる可能性があります。

実際に、複数の緑内障点眼薬を使用する患者さんでは、点眼数が増えるほど治療の負担が大きくなることが報告されています。

また、CIGTS(Collaborative Initial Glaucoma Treatment Study)の解析では、点眼をきちんと使用できている患者さんほど、長期的な視野の悪化が少ないことが示されています。

つまり、

薬を増やすことよりも、「無理なく長期間続けられる治療」を考えることが重要なのです。

「点眼が増える」こと自体が治療上の問題になることもあります

緑内障の点眼薬には、眼圧を下げるという大きなメリットがあります。

一方で、複数の点眼を長期間使用すると、眼表面の乾燥感、異物感、充血などが問題になることがあります。

特に防腐剤であるBAK(ベンザルコニウム塩化物)は、使用量や使用期間が増えるほど眼表面への負担が問題となることが知られています。

「目薬を増やしたら、目がゴロゴロするようになった」

「充血がひどくなった」

「目が乾いてつらい」

という場合には、単純にさらに薬を追加するのではなく、現在の治療そのものを見直すことも大切です。

「点眼を追加する」以外にも治療方法があります

緑内障治療には、

点眼薬だけではありません。

病状によっては、

  • SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)
  • MIGS(低侵襲緑内障手術)
  • 濾過手術
  • チューブシャント手術

などを検討することがあります。

特にSLTについては、LiGHT Trialという大規模な無作為化比較試験で、初期治療としてSLTを行う方法が点眼治療と同等以上の眼圧コントロールを示し、6年間の追跡ではSLTを最初に行った群で緑内障の進行や追加の手術が少なかったことが報告されています。

さらに2025年に報告されたLiGHT Trialの6年間の視野解析でも、SLTを最初に行った群では点眼を最初に行った群より視野の進行速度が遅かったと報告されています。

もちろん、これは「SLTのほうが全員に適している」という意味ではありません。

大切なのは、

点眼を増やすことだけが治療強化ではない

ということです。

選択的レーザー繊維柱帯形成術(SLT)
緑内障の治療である選択的繊維柱帯形成術(SLT)という痛みのないレーザー治療について説明します。SLTは眼圧を下げ、目薬を減らせる可能性を秘めている治療法です。また初期にSLT治療を行えば点眼治療をなしにすることも可能です。岐阜市内で行える施設はほとんどなく、当院では治療経験の豊富な緑内障専門医が担当します。

治療を強化するかどうかは「眼圧+視神経+視野」で考える

では、実際にはどのようなときに治療を強化するのでしょうか。

単純に眼圧の数字だけを見るのではなく、

①眼圧
②OCTなどでみた視神経の変化
③視野検査の変化
④これまでの進行速度
⑤患者さんの年齢・生活背景
⑥点眼薬による負担

を総合して判断することが重要です。

例えば、眼圧が少し高くても、OCTや視野が長期間安定している場合には、すぐに薬を追加せず経過を確認するという選択肢があります。

反対に、

眼圧がそれほど高く見えなくても、視野や視神経の障害が進行している場合には、治療を強化する必要があります。

この場合には、現在の目標眼圧そのものをさらに低く設定することも考えます。

つまり、

「眼圧が高いから治療する」のではなく、「その眼圧で視神経が守れているか」を見ることが重要です。

治療の「強さ」よりも「適切な治療」を

緑内障は長く付き合っていく病気です。

そのため、一時的に眼圧を下げることだけを考えるのではなく、

10年、20年、30年先まで視野を守れる治療なのか

という視点が必要になります。

点眼薬を追加することで十分な効果が期待できる患者さんもいます。

一方で、点眼数が増えすぎて負担が大きい場合には、治療を見直す必要があります。

また、緑内障の治療方針として、レーザーや手術を含めて検討することもあります。

緑内障治療で大切なのは、

「できるだけたくさん薬を使うこと」ではありません。

「その人にとって、長期間にわたって視野を守るために最も適した治療を選ぶこと」です。

眼圧だけでなく、OCTによる視神経の状態や視野検査の変化を長期的に確認しながら、点眼・レーザー・手術を含めて、その時点で必要な治療を考えていく必要があります。

緑内障ガイドライン第5版

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