この記事の結論
加齢黄斑変性の黄斑新生血管(MNV)は、病的な漏出や出血を起こす一方で、障害された黄斑循環を補う代償的・組織保護的な役割を持つ可能性があります。そのため、抗VEGF治療ではMNVを単純に完全消失させることだけを目的とするのではなく、病的な漏出を抑えながら黄斑組織と視機能を長期的に維持することが重要です。
加齢黄斑変性は、目の奥にある「黄斑」という、ものを見る中心部分に障害が起こる病気です。
特に「滲出型加齢黄斑変性」では、黄斑の近くに通常はない新しい血管ができることがあります。この血管を**黄斑新生血管(MNV)**と呼びます。
MNVから血液の成分が漏れると、網膜に水がたまったり、出血したりするため、視力が低下します。
そのため、これまでは、
「新生血管=悪い血管」
と考えられることが多く、抗VEGF薬によって新生血管の活動を抑える治療が行われてきました。
しかし、最近の研究からは、MNVをもう少し違った視点から考える必要があることが分かってきました。


新生血管は、なぜできる?
黄斑にある網膜や網膜色素上皮は、たくさんの酸素や栄養を必要としています。
加齢黄斑変性では、年齢による変化などによって、黄斑周囲の組織や血液循環に負担がかかります。
すると、目はその状態に対応しようとして、VEGFという物質を増やします。
VEGFには新しい血管を作る働きがあります。
その結果としてできるのがMNVです。
つまりMNVは、単純に「突然できた悪い血管」というより、
傷んだ黄斑を何とか支えようとしてできた血管
という側面もあるのではないかと考えられるようになってきました。
MNVの「悪い面」と「支える面」
MNVには、確かに問題があります。
血管が未熟で不安定な状態だと、
- 網膜に水がたまる
- 網膜の下に水がたまる
- 出血する
- 網膜や網膜色素上皮が傷つく
といったことが起こります。
これが、視力低下につながります。
一方で、MNVができることで、傷んだ脈絡膜の血流を補い、網膜や網膜色素上皮に酸素や栄養を届ける働きをしている可能性もあります。
つまり、
MNVには「病気を悪化させる面」と「傷んだ組織を支える面」の両方がある
と考えられるようになってきたのです。
もちろん、すべてのMNVが目を守っているという意味ではありません。
「新生血管が残っている」≠「治療失敗」
OCTAという検査を使うと、MNVの血管を詳しく観察することができます。
抗VEGF治療によって網膜の水分や出血がなくなっても、OCTAではMNVそのものが残っていることがあります。
以前であれば、
「新生血管が残っているから、まだ治療が足りないのでは?」
と考えたくなります。
しかし、現在では必ずしもそうではないと考えられています。
大切なのは、MNVがあるかどうかだけではなく、
「その血管が現在、悪さをしているかどうか」
です。
- 網膜の中に水がたまっていないか
- 網膜の下に水がたまっていないか
- 新しい出血がないか
- 視力が変化していないか
などを、OCTやOCTA、視力検査などを組み合わせて判断します。
「血管が残っているほうが良い」場合
2020年にQuerquesらが発表した研究では、抗VEGF治療後に病気が落ち着いている患者さんを調べています。
この研究では、MNVが線維化・瘢痕化している患者さんと、血管成分が比較的残っている患者さんを比較しました。
すると、血管成分が残っている患者さんのほうが、視力が良く、網膜色素上皮の萎縮が少なく、網膜の状態も良好でした。
この結果から、
「新生血管を完全になくすことが、必ずしも最も良い結果につながるとは限らない」
という考え方が出てきました。
むしろ、MNVからの「漏れ」を抑えながら、安定した血管として残ることが、網膜を守ることにつながる可能性があります。
抗VEGF治療は何をしている?
抗VEGF薬は、MNVを単純に「消す薬」というより、
MNVからの異常な漏れを抑えて、網膜を傷つけない状態にする薬
と考えると分かりやすいでしょう。
治療によって、
水がたまる・出血する
↓
漏れが減る
↓
網膜が安定する
という状態を目指します。
その結果、OCTAではMNVが残っていても、網膜には水がなく、視力が安定していることがあります。
このような場合には、MNVが残っていることだけを理由に、治療を強くする必要があるとは限りません。
ただし、MNVを放置してよいという意味ではない
ここは非常に重要です。
MNVが残っている患者さんの中には、その後に再び血管から漏れが生じ、網膜に水がたまったり、出血したりすることがあります。
そのため、
「新生血管は目を守るから治療しなくてよい」
という意味ではありません。
むしろ、
MNVの良い面をできるだけ残しながら、悪い面である「漏れ」や「出血」を抑える
という考え方が重要になってきています。
OCT・OCTAを使って経過を確認します
加齢黄斑変性では、視力だけを見て治療を決めるわけではありません。
OCTでは、
- 網膜の中の水
- 網膜の下の水
- 網膜色素上皮の状態
- 網膜の萎縮
- 線維化
などを確認します。
さらにOCTAでは、MNVの血管の状態を確認することができます。
そして、
「新生血管があるか」
だけではなく、
「増大していないか」
「安定しているのか」
という視点で経過を見ていく必要があります。
「加齢黄斑変性の治療」≠「新生血管を消す治療」
加齢黄斑変性の治療を考えるとき、
「新生血管がある=悪い」
と単純に考えるのではなく、
「なぜ新生血管ができたのか」
「その血管が現在、網膜にどのような影響を与えているのか」
を考えることが大切です。
近年の研究からは、MNVには、
病気を悪化させる働き
と
傷んだ黄斑を支える働き
の両方がある可能性が分かってきました。
そのため、抗VEGF治療でも、
・「新生血管をすべて消す」ことだけを目標にするのではなく、異常な漏れを抑えながら、黄斑の組織と視力を長く守る
・数十回と継続的な治療を要することもあり、長期的な目線で「病気と共存」していく
という考え方が重要になっています。
加齢黄斑変性は、早期に発見して状態を確認することが大切です。
「ものがゆがんで見える」「中心が見えにくい」「片目だけ見え方がおかしい」と感じた場合には、早めに眼科で検査を受けることをおすすめします。

岐阜市・加納周辺で加齢黄斑変性や網膜の病気についてご心配な方は、窪田眼科医院へご相談ください。







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