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こどもの「涙目(なみだめ)」について

病気について

こどもの「涙目(なみだめ)」について解説します。

2022年11月に先天鼻涙管閉塞のガイドラインというものが提示されましたので、その一部を紹介します。

はじめに

あまり聞きなれないかもしれませんが「先天鼻涙管閉塞」について解説します。

眼の症状の一つに涙目(なみだめ)があります。

涙が下瞼にたまり、常に泣いているような状態や、メヤニが常にたまっている状態です。大人でも子どもでも同様の症状は起こりますが、その原因は様々です。

こどもの涙目の原因の一つに先天鼻涙管閉塞があります。生まれて間もないころから目がウルウルしている赤ちゃんを見ることがあります。

原因の一つに先天鼻涙管閉塞が原因であります。

涙というのは、上瞼の外側の奥に存在する涙腺という涙を作る組織から分泌されます。目の表面を一様に潤すことで目の表面を乾くことなく、瞬きがスムーズにできるようになっています。

目の表面を潤した涙は、瞬きのたびに上下の瞼の内側に存在する涙点という穴から流れ、鼻に流れていきます。この通り道を涙道(るいどう)といいます。

参天製薬より

泣いたとき鼻をすするのは、大量に分泌された涙が涙道を通り、鼻から鼻水として出ていることを示します。

先天鼻涙管閉塞ではこの涙道の終わり、つまり鼻への出口の部分に生まれつきの薄い膜が存在しているため涙が鼻へ流れでず、涙道へ流れた涙が逆流して下瞼にたまってしまいます。

この薄い膜は生まれてくる前に多くは開通しているのですが、時々、開通しないまま生まれてくることがあります。しかし開通しないまま生まれたきた赤ちゃんも1歳までに90%は自然に開通することが知られています。

その間、目はウルウルしてメヤニが大量にたまることもあり早めに治療をしたいという場合は、ブジーという細い針金を涙道に通して、開放する治療をすることがあります。以前はよく行われていた手法ですが、最近は感染や侵襲を考えてあまりされていません。

そんな中で2022年11月に先天鼻涙管閉塞診療ガイドラインというのが日本涙道・涙液学会から提示されました。

そのなかで治療に関する疑問に対する答えをエビデンス(根拠)に基づいて出されたのでいくつか紹介します。

根拠の強さ、推奨の強さは下の表を参考にしてください

<エビデン ス(根拠)の強さ>
(どれだけの根拠があるか)

A(強):効果の推定値に強く確信がある
B(中):効果の推定値に中等度の確信がある
C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である
D(非常に弱い):効果の推定値がほとんど確信でき ない

<推奨の強さ>
(どれだけ推奨されるか)

実施することを強く推奨する  
実施することを弱く提案する  
実施しないことを弱く提案する  
実施しないことを強く推奨する

マッサージについて

Q 涙囊マッサージは推奨されるか?

推奨文

涙囊マッサージは,涙囊の内容物を鼻涙管下端に向かって押し込む加圧マッサージを行うことで治癒を促す可能性がある.効果に十分な確証はないが,家庭で行えるため費用を要さず,明らかな弊害の報 告もないため,可能であれば実施を提案する.

推奨の強さ  実施することを弱く提案する

Q に対するエビデンスの強さ C(弱)

<保護者の方へ>

涙囊マッサージは有効である可能性があるという結論でした

涙囊マッサージを行う場合の注意点

まずマッサージをする人の爪を切り,手を洗いましょう.

マッサージは目頭の涙囊の部分(目頭の内側)を指で足の方向に向かって10 回程度押し下げ、涙の排水管の一番下 の詰まっているところに圧が加わるようにします.

それを 5~10 回で 1 セットとして 1 日に 2~4 セットを無理がない範囲で行います.

抗菌点眼薬について

Q 保存的加療(=手術を行わない)において抗菌薬局所投与は推奨されるか?

推奨文  

抗菌薬局所投与(抗菌点眼薬)は治癒を促すものではない.眼脂や膿粘液性分泌物の減少効果は期待できる.耐性菌が増加する可能性があるため,長期間の使用は避け,必要時のみの投与を提案する.

推奨の強さ  実施することを弱く提案する

Q に対するエビデンスの強さ C(弱

<保護者の方へ>

上で述べる「治癒を促すものではない」というのは点眼だけで鼻涙管の膜が開くわけではないということを意味します。

抗菌の目薬は必要時のみ使用するようにしましょう.抗菌の目薬をあまり長い間使うと耐性菌(抗菌目薬が効かない細菌)が出てしまうことがあります

まぶたに「目やに」がついていたら温かく濡らしたティッシュなどで,「目やに」を柔らかくしてからそっと拭き取りましょう

こどもの視力への影響について

Q 先天鼻涙管閉塞は弱視リスクを増やすか?

推奨文  

先天鼻涙管閉塞が弱視の要因となるかどうかは判定不能であった.弱視に関して特段の注意を払うべきかは不確実であり,一般的検査をできる範囲で行うことを推奨 する.

推奨の強さ 実施することを強く推奨する

Q に対するエビデンスの強さ D(非常に弱い)

<保護者の方へ>

涙目の症状が持続する事で視力の発達に影響は出ないかということですが、明確に言及することはできないという結論でした。

視力の発達は3か月~3歳の間にある程度決まるため鼻涙管が1歳までに90%程度は自然開放するのであれば視力発達への影響はそれほどないのでは?と考えます。

今後この病気が将来視力に影響するかどうか詳しい研究が予定されているようです。

※こどもの視力発達についてはこちら

まとめ

先天鼻涙管閉塞に関して対応できることは比較的エビデンス(根拠)が低い事項が多いことが分かりました。その中でも何とかしたいと思うのが保護者の方々の気持ちであり、涙嚢マッサージや、抗菌点眼薬でメヤニを減らす対応は行ってもよいと考えます

一方、涙目になることで視力の発達に影響を与えてしまうのではないかという心配はそれほど過敏になる必要はないと思います。

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