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こどもの色覚異常 スマホアプリで確認!

おしらせ

今回は色覚異常について,こどもがどのように見えているのかを説明します.

ユニバーサルデザイン

まずこどもの色覚異常について説明する前に,ユニバーサルデザインという言葉は聞いたことがありますでしょうか?

ユニバーサルは「普遍的な」「すべてに共通の」という意味ですから,「ユニバーサルデザイン」は「すべてのひとにやさしいデザイン」をという意味でつかわれます.

もともとバリアフリーという言葉がありましたが,「初めからみんなにやさしいデザインを考えましょう」ということからユニバーサルデザインという考えが登場してきたようです.

カラーユニバーサルデザイン

眼科の領域でも「カラーユニバーサルデザイン」という言葉があります.

現代社会において公共施設の案内や教科書をはじめとした印刷物など,多くの物がカラーで表現されていますが,色の見え方は人によってさまざまなのです.多くの人はそれらのすべてを色分けして判別することが可能なのですが,一部色の組み合わせが区別しにくい方もいます.

こうした背景からすべての人に情報を等しく提供していくべきであり,それには「色」というものにより配慮したデザインを用意し,すべての人に利用しやすい環境を提供すべきであるという考えが「カラーユニバーサルデザイン」です.

色覚異常

小児眼科のページにも記載させていただいておりますが,生まれながら色覚に異常を持つ方は,男子で20人に1人(約5%),女子で500人に1人(約02%)にみられます.日常生活に不自由はありませんが,状況によっては色を見誤って周囲から誤解を受けることや,学校でも授業の一部が理解しにくいことがあります.多くは本人に自覚はなく,検査を受けるまで保護者の方もそのことに気づいてない場合が少なくありません.

学校検診における色覚検査

過去には学校検診において簡易的な色覚検査が行われていましたが,2003年以降,学校検診の項目から色覚検査が削除されていました.色覚検査が差別につながるという考え,また多くの色覚異常のこどもは日常生活に不自由がないのに検査表で正常者にはあきらかに読める文字が読めないために,過大に評価されることが理由でした.

しかし,学校検診の必須項目から色覚検査が削除されたことで,一度も色覚検査を受けずに就職などで初めて自分の色覚特性を知り,受診することが増えてしまいました.そこで,2017年から学校検診で任意での色覚検査が復活しました.

当院長が校医を務めております学校においても色覚検査表によるスクリーニング検査を行ってもらっています.

光の三原色

少し難しい話になりますが,光の三原色は赤、緑、青の3つの光の組み合わせでつくられますが、視細胞も、赤に敏感なタイプ、緑に敏感なタイプ、そして青に敏感なタイプの3種類があります。色覚異常は、この3種類の視細胞のどれかが足りなかったり、十分に機能しなかったりするために起こります。

眼の網膜には錐体という色を判別する細胞が備わっています.その錐体には「L錐体」,「M錐体」,「S錐体」とあります.

それぞれ

・L錐体=赤

・M錐体=緑

S錐体=青

を検知します.

色覚異常のタイプ

「色覚異常」は「L」「M」「S」の三つの錐体のいずれかが正常に機能しないことで発生し,「L 錐体」が機能しない場合は赤色が、「M 錐体」が機能しない場合は緑色が、「S 錐体」が機能しない場合は青色が、それぞれ見えにくくなります.そして、どの錐体が正常に機能しないかによって、「色覚異常」は大きく三つのタイプに分けられています.

色覚異常には「1型2色覚(P)」「2型色覚(D)」「3型色覚(T)」のタイプがあり、それぞれ見え方が違っています。

◆1型色覚(P:Protanope)

赤色を感じる「L 錐体」の機能不全もしくは欠損により発生します。
先天性色覚障がいの約25%を占めます。

・日本人男性の1%強。
・黄緑と橙、緑と茶や灰色、青と紫、ピンクと灰色、ピンクと水色,赤と黒などを混同しやすい。
・赤が薄暗く見える

◆2型色覚(D:Deuteranope)

緑色を感じる「M 錐体」の機能不全もしくは欠損により発生します。
先天性色覚障がいの約75%を占め、最も多いタイプです。

・日本人男性の4%弱。
・黄緑と橙、緑と茶や灰色、青と紫、ピンクと灰色などを混同しやすい。
・緑は普通の明るさに見え、薄暗くはならない。

◆3型色覚(T:Trianope)

青色を感じる「S 錐体」の機能不全もしくは欠損により発生します。
3型色覚は非常にまれです.

どのように見えているの?

そのような色を子どもたちはどのように見えているのでしょうか.

程度によりますが,お母さん,お父さんにも参考になるものが「色のシミュレータ」というスマートフォンのアプリです.

https://asada.website/cvsimulator/j/

このスマートフォンアプリでは正常(C),1型2色覚(P),2型2色覚(D),3型2色覚(T)の4つのパターンで違いを表示してくれます.

※「2色覚」は1つの錐体が欠損している場合の状態を示しています.

スマートフォンであればその場で色変換をしてくれるのでわかりやすいのではないでしょうか.是非ご参加ください。

また,間違いやすい色の組み合わせとして,日本眼科学会やカラーユニバーサルデザインのガイドブックなどで提示されていますのでこちらも参考になります.

日本眼科学会より

カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット ガイドブック(第2版)

PDFのダウンロード(12.7MB):制作・発行:カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット制作委員会

まとめ

学校などで色覚検査を受けたお子さんが「色覚異常の疑い」を指摘されたとき、「まさか」と思いなかなか受け入れられない方もいらっしゃると思います。

現代はユニバーサルデザインが提唱され,多様性に富む時代であり,奇抜な色使いの絵を描いても今は個性の時代です。ゴッホやウイリアム・ターナーなどの有名な画家も色覚異常であったことは有名であり,その個性ととらえて伸ばしていくのも、ひとつの生き方です。

色覚異常は治るものではありませんが,お子さんの色の感じ方を把握し,寄り添い見守ることが大切です.

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