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白内障手術を予定している緑内障患者さんへ ~海外の研究、日本人データ、そしてガイドラインから考える~

おしらせ

緑内障の治療について

緑内障は、日本人の中途失明原因の第1位であり、一度障害を受けた視神経や視野を元に戻すことはできません。そのため、**治療の目的は「現在の見え方をできるだけ長く維持すること」**にあります。

そのために最も確立されている治療が眼圧を下げることです。多くの臨床研究で、眼圧を下げることで緑内障の進行を抑えられることが証明されています。

治療には、

  • 点眼薬
  • レーザー治療(SLT)
  • 手術

があります。

近年では、白内障手術を受ける患者さんに対して、緑内障の手術を同時に行うという考え方が広まりつつあります。 (MIGS:ミグス)

その代表的な治療のひとつが**iStent(アイステント)**です。


医師紹介
当院では眼科専門医、医学博士2名体制です。大人から子供までの眼鏡、コンタクトレンズ処方などの一般的な治療から、緑内障や神経眼科など専門的な知識を備え長年地域のかかりつけ眼科として診療を行っております。白内障手術はもちろん、網膜・緑内障などに対するレーザー治療などにも対応いたします。
低侵襲緑内障手術(ミグス:MIGS)
緑内障は視神経障害を引き起こし、不可逆的な視力喪失をもたらす疾患です。その治療は眼圧を下げることを目的としますが、薬物治療やレーザー治療で十分に効果が得られない場合、外科的治療が必要になります。MIGS(ミグス)は、従来の濾過手術と比較して侵襲性が低く、早期回復が期待される手術方法として注目されています。

海外ではどのような報告があるのでしょうか?

iStentは2000年代から使用されてきましたが、この数年間でエビデンスが急速に蓄積されています。

2025年に発表された総説では、世界中の研究を解析した結果、

  • 白内障手術単独より眼圧が低く維持される
  • 点眼薬を減らせる可能性が高い
  • 合併症が少なく安全性が高い

ことが報告されています。

さらに、MIGSミグス(低侵襲緑内障手術)全体をまとめたレビューでは、iStentは軽症から中等症の開放隅角緑内障に対する有力な治療選択肢として位置づけられています。

最近では、単に眼圧を下げるだけではなく、視野障害の進行を遅らせる可能性も報告されるようになり、今後さらに注目される治療の一つとなっています。

このように、海外ではiStentは「白内障手術と同時に行うことで、長期的な緑内障管理に役立つ可能性がある治療」と考えられるようになっています。


日本人ではどうだったのでしょうか?

海外の研究結果をそのまま日本人に当てはめることはできません。

その理由は、日本人では**正常眼圧緑内障(NTG)**が約7割を占めるという特徴があるためです。

欧米では眼圧が高いタイプの緑内障が多い一方、日本では正常範囲の眼圧でも視神経障害が進行する患者さんが多く、より低い目標眼圧が必要になることがあります。

2025年には、日本人を対象とした3年間の研究が報告されました。

この研究では、白内障手術と同時にiStent inject Wを挿入した患者さんを追跡した結果、

  • 眼圧低下が3年間維持された
  • 点眼薬の本数が減少した
  • 安全性も良好だった

ことが示されました。

特に、この研究には正常眼圧緑内障の患者さんも多く含まれており、日本人においてもiStentが有効な選択肢となる可能性が示された点は重要です。

Usami T, et al. Three-Year Outcomes of iStent Inject W Implantation Combined With Phacoemulsification in Japanese Eyes With Open-Angle Glaucoma(Cureus, 2025


日本の緑内障診療ガイドラインではどのように考えられているのでしょうか?

日本緑内障学会が作成した**『緑内障診療ガイドライン第5版』**では、iStentを含むMIGSは、低侵襲で安全性の高い緑内障手術として位置づけられています。

一方で、ガイドラインでは次の点も明確に示されています。

  • 白内障手術との併用で行われる
  • 軽症から中等症の開放隅角緑内障が主な適応である
  • 点眼薬を減らせる可能性がある
  • 濾過手術ほど大きな眼圧下降効果は期待できない

つまり、**「すべての患者さんに勧められる治療」ではなく、「適切な患者さんを選んで行うことでメリットが期待できる治療」**という位置づけです。

これは、海外の研究結果とも一致しています。


当院の方針

当院では、白内障手術を予定している緑内障患者さんに対し、「白内障を治すこと」だけではなく、「今後の緑内障治療をどのように続けていくか」という視点も大切にしています。

iStentは、眼圧を安定させたり、点眼薬を減らしたりできる可能性がある一方で、すべての患者さんに適しているわけではありません。

例えば、

  • 緑内障が軽症~中等症である
  • 白内障手術を予定している
  • 点眼薬を減らしたい
  • 眼圧をもう少し下げたい

このような患者さんでは、有力な選択肢となる可能性があります。

一方で、

  • 緑内障が進行している
  • 目標眼圧が10mmHg前後など非常に低い
  • より強い眼圧下降が必要

といった場合には、線維柱帯切除術やプリザーフロ®マイクロシャントなど、より強力な眼圧下降効果が期待できる手術(濾過ろか手術)が適していることもあります。

当院では、最新の海外エビデンス、日本人の臨床データ、日本緑内障学会のガイドラインを踏まえながら、患者さん一人ひとりの目標眼圧や緑内障の進行度、生活スタイルを総合的に評価し、最適な治療法をご提案しています。

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