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第59回網膜硝子体学会 シンポジウム1(前半)

学会・勉強会内容

こんにちは。

先日の第74回臨床眼科学会に引き続き、Web学会に参加しました。

第59回網膜硝子体学会のシンポジウムの一部です。

特に網膜前膜ERMについての2名の先生のご講演が特にわかりやすくまとめられていて勉強になりました。

専門的な部分が多いですがご容赦ください。

石川桂二郎先生

裂孔原性網膜剥離にたいして硝子体手術後の黄斑パッカー(網膜前膜)の発生の大規模研究(術前、1、3、6か月の黄斑の情報がないもの、再手術を除く)

・2239例で検討

・4-5%に硝子体術後6か月以内に黄斑パッカー発症

・裂孔部位、範囲、裂孔形態、裂孔サイズ、増殖硝子体網膜症(PVR)グレードに差はない

・手技:バックル併用、白内障手術同時、カッターサイズ、レーザー数、タンポナーデにおいて有意な差はないが、内境界膜(ILM)剥離、意図的裂孔において有意差を認めた

・意図的裂孔作成のほうが黄斑パッカーを作成する傾向にある

・逆に、意図的裂孔作成に注目して見ると、年齢・裂孔タイプ・黄斑剥離・眼圧・剥離範囲・裂孔部位・PVR・カッターサイズ・ILM剥離・レーザー数・タンポナーデすべてに差が出てしまう(症例に偏りが出る)ため傾向スコアを作成し偏りをなくし再検討

 ⇒ やはり、意図的裂孔作成した症例が2-3倍黄斑パッカーを発症しやすい

しかし意図的裂孔作成し網膜剥離を治す方法は一般的で、専門医による網膜剥離手術の約3割で行われていた。

意図的裂孔は一般的に合併症の少ない手技

・意図的裂孔作成部位の繊維膜形成の報告(1990年付近の報告)

・網膜色素上皮細胞はレーザーにより細胞間接着が壊れ、筋線維芽細胞の変化する

・筋線維芽細胞と変化するにつれ、増殖・遊走・細胞外マトリックス産生能の獲得

・意図的裂孔から遊離した色素上皮細胞が局所細胞増殖に関与している

岡本史樹先生

網膜前膜(ERM)の形態と予後について

・視細胞内接外節(ISOS)、外境界膜(ELM)より錐体外節の先端(COST)の存在、連続性が視力予後に影響

・視細胞外節長(PROS)の幅が厚いほど視力良好⇒foveal bulgeの存在  

(2013年あたりまでは網膜外層に注目した評価をされてきた)

・最近は網膜内層に注目した評価がなされるようになった。(2019年あたり)

・中心窩付近に存在する網膜内浮腫

網膜内層変形度が視力予後に影響

中心窩異所性網膜内層ectopic inner foveal layers (EIFL)が厚いほど視力予後不良

・ERM ドーム型、平坦型、陥凹型に3つに分類⇒ ドーム型が視力予後良好であった(2020年)

ERM形態のまとめ

Dome型、中心網膜厚(CRT)が薄い、インターデジテーションゾーン(IZ)が連続、エリプソイドゾーン(EZ)が連続、嚢胞(Cyst)がない、PROSが長い、中心窩に網膜内層組織がない症例が視力予後良い

ERMの変視について

・歪みの改善度については、改善はするが歪みは残存するしかし硝子体手術(黄斑円孔、糖尿病網膜症、黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、黄斑円孔)での中で満足度が一番得られる手術である。

・そもそもERM手術のQOL満足度は視力、コントラスト感度でもなく、変視である

術前の中心網膜神野厚いほど術後変視が強くのこる

・OCTアンギオグラフィーで黄斑部無血管帯(FAZ)が小さいと変視がつよくでる。

ERMの変視のまとめ

・INLが厚く、網膜との接着面積が広い、雛が深い、雛がいっぱい、FAZが狭く垂直変異している症例が予後不良である

ERMの不等像視

・ほとんどが大視症8割、術後も大視症はかわりない

内顆粒層(INL)があついほど、FAZ小さいほど不等像視がつよい

・垂直方向に偏位

・しかし視力、変視とは、独立した指標

内境界膜(ILM)剥離を行った方が再発率、再手術率は低下する

・一方、ILM剥離により網膜感度が低下する報告もある

・緑内障患者にたいしてILM剥離すると視野障害が別に出現

・ERM術後(ILM剥離)患者の視野障害について重回帰分析で原因はILM剥離であった。(2020)

・ILM剥離⇒網膜感度低下、視野障害(2018)

まとめ

ERMのILM剥離は網膜感度の低下・視野障害と再発率・再手術率のバランスで治療検討すべき

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