こんにちは。
体のさまざまな組織には血管が張りめぐらされており、血液から栄養を受けています。目も同様に栄養を受けなければなりません。
しかし目には血液からの栄養を必要としない部分があります。それは水晶体(レンズ)と角膜(黒目)です。
それらは透明性を維持しなければならないため、血管がない組織であり、“房水”という目の中で作られる液体から栄養を受けています。
今回はその房水と緑内障発作との関係について説明します。
房水の流れ
目のなかには常に房水が作られ、流れていく仕組みがあります。
房水の排出される出口付近を隅角といい、さらに細かく言うと隅角の“シュレム管“から吸収されます。
緑内障発作
狭隅角とは
眼の中の“隅角”が“狭く”なっている状態です。
狭隅角は遠視の年配の女性に比較的多くみられます。
房水の流れがスムーズで、作られる量と排出される量が正常にコントロールできていれば、眼圧(眼の内圧)を正常に保つことができます。
隅角が狭くなると房水の排出が妨げられて、完全に閉塞すると“急性緑内障発作”を起こし、急激に眼圧が上昇します。
急性緑内障発作
正常な眼圧は10~21mmHgという値をとりますが、発作をおこすと50mmhg以上に上昇することもあります。突然、眼圧が上昇することで頭痛・眼痛・吐気・視力低下がおこります。脳出血と症状が似ているため、脳外科に救急搬送され、治療が遅れることもあります。数時間以内に眼圧を下げなければならず、放置すると失明に至ってしまいます。
検査方法
隅角を調べる検査では特殊なコンタクトレンズを目の表面に乗せるので、軽い圧迫感がありますが検査前に麻酔の眼薬をしているため痛みはありません。
緑内障発作の危険因子
日常生活での注意
明るい所では瞳孔が閉じて、暗い所では瞳孔が開きます。
瞳孔が開くと隅角部分が狭くなるため、もともと狭い隅角が、瞳孔が開くことによって更に狭くなり、房水の流れが止まってしまいます。
就寝前にベッドライトで読書をされる方もいるかもしれませんが、狭隅角と診断された方はしっかり部屋の電気をつけて読書したほうが良いでしょう。
白内障は発作の原因の1つ
白内障になると一般に水晶体は分厚くなります。
分厚くなった水晶体が後ろから虹彩を押し上げるため、隅角は狭くなり、緑内障発作を起こしやすくなります。白内障による狭隅角と診断された場合は、早期に白内障手術が必要となります。
緑内障発作をおこす注意すべき薬
緑内障発作を誘発する薬としては、市販薬の風邪薬、抗ヒスタミン薬、睡眠薬、手術前に注射するアトロピンなどがあります。いずれも抗コリン作用という隅角を狭くさせる働きによるものです。
狭隅角と診断された方は、これらの薬を服用すると緑内障発作を起こす可能性が出てくるため、全身麻酔や内視鏡検査にはリスクを伴うことになってしまいます。
狭隅角で緑内障発作を起こす危険が高い方は、発作を予防するためのレーザー手術を行うことができます。手術後は、発作を起こさなくなりますので、安心してお薬を使用いただけます。
治療
緑内障発作のちりょうとして緑内障診療ガイドライン(第4版)には以下の方法が記載されています。
レーザー虹彩切開術
レーザーを使って虹彩周辺部に房水の通り道を開けます。虹彩に穴をあけることにより緑内障発作の予防になります。10分程度で、強い痛みもあり眼帯や入浴の制限もなく、そのまま徒歩で帰宅できます。
白内障手術
白内障のために膨隆した水晶体は、狭隅角化の大きな原因です。白内障手術で挿入する眼内レンズは元々の水晶体に比べればはるかに薄く、術後隅角は大きく開くため根本的な治療になります。
どちらの治療を選択するのかは難しいところですが、50歳くらいまでの方で白内障がほとんどなければ、レーザー虹彩切開術を選択します。視力が下がるほどの白内障が進んでいる場合には、白内障手術も選択肢になります。発作の程度、年齢、白内障の程度に応じて判断が必要です。
まとめ
緑内障発作は突然おこります。
緑内障発作を起こした方は、元来目が良くて眼科にかかったことのないような方がほとんどです。早期に発見して適切な治療を受けていれば、視機能は維持される病気ですので50歳くらいになったら一度眼科での検査を受けることをお勧めします。