網膜硝子体学会総会の講演内容をお伝えします
今回は網膜剥離と、網膜前膜についてです。※網膜剥離(網膜硝子体学会)
基本的には硝子体手術を行いますがその後の視機能評価や術直後の体位制限など患者さんのQOLに関する内容を詳細に講演されていました。
野地将先生
硝子体手術後の裂孔原性網膜剥離例でmultiple subretinal fluid blebs (MSFB)の発生率をとその因子を後ろ向きに検討
・86眼中8眼に見られた
・若年者のRRDに多く見られる
→液化が少なく燃調な硝子体
→RRDの進行が遅く、網膜下液が粘調であり、長期にわたり停滞し吸収されにくい可能性
・眼底自発蛍光(FAF)所見
①FAF過蛍光7眼
→網膜下液が長期貯留により視細胞外節が蓄積の可能性
②FAF低蛍光1眼
→術後の眼底所見で色素沈着所見=網膜色素上皮過形成(PREメラニン増加)が生じた可能性
つまりMSFBのなかには単純な網膜下液の貯留によるものとメラニンの増生によるものと混在している可能性
・色素上皮過形成がどのような機序でMSFBに関与しているかは不明
網膜剥離の治療を行っても完全には元の場所に網膜は復位しきらないのですよね。MSFBが時折残存することがあり、しかも中心窩に残存してしまう場合は視力があまり出にくいですよね。この研究が進めば手術手技にも改良がくわえられそうです。
高御堂裕基先生
裂孔原性網膜剥離の再手術の危険因子
2008年-2019年の間の裂孔原性網膜剥離に対する硝子体手術を後ろ向きに検討
・黄斑剥離、剥離象限、裂孔数に有意差を認めた
・ILM剥離、手術時間に有意差を認めた
・タンポナーデの種類は有意差なし
・多変量解析では下方RD、鼻側裂孔、手術時間が危険因子となった
下方の剥離、手術時間が危険因子となることは理解できますが、鼻側裂孔が危険因子となることは意外でした。後部硝子体剥離の関係や、発見のされにくさが影響しているのでしょうか。
柿木雅志先生
裂孔原性網膜剥離で黄斑剥離の危険因子
男性・白内障手術後のIOL眼・無水晶体眼が危険因子となる
①男性:受診までの社会的な背景が女性と異なる
②IOL眼・無水晶体眼:術後の眼内の構造変化が硝子体の形態変化に影響を及ぼす可能性
過去の報告と同様な結果びに加え、男性が黄斑剥離をきたすことが分かり、より早く眼科受診をしましょうということですね。
後沢先生
下方裂孔の網膜剥離の術後うつ伏せの必要性の検討
MRIで術後4日目の状態の評価8眼
・術後伏臥位でも厳密には下方を向いておらず上転してしまう
・赤道部より前方の裂孔に対しては仰臥位のほうがガス接触は良好である
術後のうつぶせが不要になることは、患者様のQOLが大きく異なってきますね。
清水啓史先生
ERM による網膜外層の偏位の定量と歪視の関係性の評価
・水平方向では耳側に向かった変異が多い
・視神経乳頭の構造が偏位の変化に制限を与えている
・網膜外層の接線方向の偏位は歪視との関係があった
・中心窩周囲の視細胞偏位が歪視の一因となっている
どこを基準に測定しているかいうことが研究のポイントになりますね。
まとめ
非常に勉強になる講演でした。
特に網膜剥離治療後の体位制限については印象的な講演でした。患者さんの術直後のQOLも大切ですよね。