緑内障と点眼治療の重要性について
1. 緑内障とは?
緑内障は、視神経がダメージを受け、視野が徐々に狭くなっていく病気です。初期段階では自覚症状がほとんどなく、気づいたときには進行していることが多いため、「サイレントシーフ(Silent thief of sight:静かなる視野泥棒)」とも呼ばれます。
日本では40歳以上の約5%(20人に1人)が緑内障であるとされており、高齢になるほどその割合は増加します。放置すると失明のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。
2. 緑内障の治療目的
緑内障の主な治療法は眼圧を下げることです。残念ながら現在の医学では、一度失われた視野を回復させることはできませんが、眼圧を適切に管理することで進行を抑えることが可能です。
3. 点眼薬による治療と副作用
点眼薬は、眼圧を下げるために最も一般的に使用される治療法です。点眼薬には主に以下の種類があります。その効果と副作用について簡単に触れてみます。
- プロスタグランジン関連薬:眼圧を下げる効果が高く、1日1回の使用。
- β遮断薬:交感神経を抑えて眼圧を下げるが、全身への影響が出る場合がある。
- 炭酸脱水酵素阻害薬:房水の産生を抑えて眼圧を下げるが、頻回の点眼が必要。
- α2作動薬:眼圧を下げる効果があるが、アレルギー反応が出やすいことがある。
- Rhoキナーゼ阻害薬:房水の流出を促進し、眼圧を下げる新しいタイプの薬。既存の薬剤と異なる作用機序を持つが、著明な充血が発生する。
4. アドヒアランス(治療継続)の重要性
皆さんはアドヒアランスという言葉を耳にしたことはありますでしょうか。アドヒアランス(adherence)とは、患者が治療方針に賛同して積極的に治療を受けることを意味する言葉です。服薬アドヒアランスとも呼ばれ、患者が服薬治療を正しく行うことを指します。
眼科においても点眼治療を継続すること(アドヒアランス)は、緑内障の進行を防ぐ上で非常に重要です。しかし、多くの患者さんが「効果を実感しにくい」「点眼を忘れる」「副作用が気になる」といった理由で途中でやめてしまうケースがあります。その原因にはいくつかあります。

<アドヒアランス低下の原因>
- 自覚症状がないため、治療の重要性を理解しにくい
- 点眼を忘れやすい
- 副作用(充血、しみる感じ)による中断
- 経済的な負担
- 生活スタイルに合わない(外出先での点眼が難しい)
5. アドヒアランスと緑内障の進行
アドヒアランスの低下は、緑内障の視野障害の進行と密接に関連しています。ある研究では、アドヒアランスが不良な患者は、良好な患者と比較して視野障害の進行リスクが6倍以上になると報告されています。 また、別の研究では、アドヒアランス不良の要因として薬剤の副作用や患者自身の多様な不満が指摘されており、これらが視野障害の進行を早めることが示唆されています。 さらに、高齢の緑内障患者において、複数の点眼処方がアドヒアランスの低下に影響を及ぼすことが報告されています。
これらの研究から、アドヒアランスを維持することが視野障害の進行を防ぐ上で極めて重要であることがわかります。
点眼を継続するための工夫
- 点眼時間を決めて習慣化する(朝食後、歯磨き後など)
- アラームやカレンダー機能を活用する
- 家族と協力する(点眼を促してもらう)
- 副作用がある場合は医師に相談し、薬を調整する
- 点眼のやり方を確認し、正しく点眼する
6. まとめ
緑内障は早期発見・継続治療が重要な病気です。点眼薬は、毎日しっかり使い続けることで病気の進行を抑えることができますので忘れずに点眼することを心掛けましょう。
また当院においてアドヒアランス向上に向けたレーザー治療も対応しておりますので詳しく知りたい方は医師へご相談ください。
<緑内障:緑内障について一般的な事を開設>
<SLT:点眼薬を減らす方法について紹介>
<緑内障ガイドライン:アドヒアランスについても解説>
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