血圧は目にも影響するって知っていますか?緑内障と高血圧・低血圧の関係を、最新の研究をもとに医学博士がわかりやすく解説します。
緑内障ってどんな病気?
緑内障とは、視神経が障害されて視野が欠けていく病気です。徐々に進行し、気づかないうちに視野が狭くなっていきます。国内では40歳以上の約20人に1人(5%)が緑内障を患い、失明原因の第1位でもあります。残念ながら現在の医療では治す方法はありませんが、点眼・レーザー・手術などで眼圧を下げ、進行を抑制していく事だけが治療法であります。
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血圧と目の意外な関係
血圧と目は一見無関係に思えますが、視神経や網膜の健康には血流が不可欠です。その血流を保つためには安定した血圧が必要です。つまり、血圧が高すぎても、低すぎても視神経に悪影響が及ぶ可能性があります。
高血圧が目に与える影響
高血圧による影響は網膜に現れやすく、「高血圧性網膜症」として知られています。視神経や網膜の細い血管がダメージを受けることで、酸素や栄養が十分に届かなくなり、視神経が弱る可能性があります。
特に高血圧が長期間続くと、
- 視神経の血流が慢性的に減少
- 血管の柔軟性低下
- 視神経乳頭への酸素供給不足
といった状態になり、緑内障の進行を早める可能性があると考えられています。
低血圧や夜間低血圧のリスク
意外にも、「低血圧」のほうが緑内障と深い関係があることが近年わかってきました。特に注目されているのが「夜間低血圧」です。特に「夜間低血圧」が**正常眼圧緑内障(NTG)**の進行と関係が深いことがわかってきました。
夜になると血圧が自然と下がりますが、これが過度に低下すると視神経に十分な血液が届かなくなり、酸欠状態になる可能性があります。
- Grahamら(1995):夜間収縮期血圧が100mmHg未満になると、視野障害が進行しやすいと報告。
- Charlsonら(2014):夜間の血圧低下率が大きいほど視野障害の進行が速かったと報告
自律神経と血流の関係
緑内障患者では、**自律神経の異常(交感神経・副交感神経のバランス)**が血流調節に関係している可能性が指摘されています。
自律神経が乱れると、
- 血管の収縮・拡張が不安定になる
- 局所的な血流不足が生じやすくなる
- ストレスが加わることでさらに悪循環に
といったメカニズムが視神経の脆弱化を招くこともあります。
血圧と視神経の血流:最近の研究から
近年、OCTやLSFGなどの機器により、視神経周囲の血流を可視化する研究が進んでいます。
- Flammerら(2002):NTG患者の多くに「血流自己調節の障害(vascular dysregulation)」があると報告
- Shojiら(2012):NTG患者の視神経乳頭周辺で血流が有意に低下していたことをLSFG(レーザースペックルフローグラフィー)で確認
- Choiら(2015):OCTアンギオグラフィーを使った研究では、血管密度の低下が視野障害と相関していたと報告
- Yanagiら(2017):血圧の昼夜差と視神経乳頭血流の変動が関連することを報告
このように、単なる血圧の「高低」ではなく、安定しているかどうかがカギです。
高血圧の治療薬と緑内障の関係
高血圧の治療薬(降圧剤)も目の健康に影響を与える場合があります。
とくに問題になるのは、「夜間低血圧」を助長することです。血圧を下げる薬を夜に服用していると、夜間の血圧が必要以上に下がってしまい、視神経への血流が低下する可能性があります。
- Hayrehら(1999):
→ 降圧薬を服用している緑内障患者で視神経灌流圧(ocular perfusion pressure)の低下が視野障害と有意に関連すると示した研究。
- Charlsonら(2014):
→ 降圧薬を服用している患者の中で、夜間の拡張期血圧が45mmHg未満になると視野進行リスクが高まることを示唆。
- Costaら(2015):
→ ベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬の中には、視神経への血流を低下させる薬剤があると報告。
降圧剤は視神経灌流圧に影響するため、血圧が下がりすぎないよう服薬時間の調整が必要です。
高血圧の治療と緑内障管理を並行するには、循環器内科と眼科の連携が重要となってきます。

どんな人が注意すべき?
以下に該当する方は、血圧管理とともに眼科での定期検査をおすすめします。
- 正常眼圧緑内障と診断された方
- 夜間にふらつきや冷えを感じる方
- 高血圧治療中の方(特に夜間薬服用)
- 低血圧体質でめまいが起こりやすい方
- ストレスを感じやすく自律神経が乱れやすい方
日常生活でできる対策
視神経と血流を守るには、日々の生活習慣がカギです。
- 塩分控えめでバランスの取れた食事
- 適度な運動(有酸素運動)で血流改善
- 睡眠の質を高める
- 禁煙・節酒
- 冷え対策(温かい飲み物や湯船入浴)
また、ストレスを減らす工夫も大切です。血圧と自律神経の安定は、視神経の健康にも直結しています。
まとめ:緑内障と血圧の関係 ~ 視神経への血流が大切であった
緑内障は眼圧だけでなく、「血圧と視神経への血流」が大きく関係しています。特に夜間の血圧低下や降圧薬の影響には注意が必要です。自分に合った血圧管理と定期的な眼科検査を心がけましょう。
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