緑内障は40歳以上の20人に1人が患っている病気です。多くの人が聞いたことがあると思いますが、残念ながら緑内障は現在日本での失明原因第一位の目の病気です。
しかしすべての緑内障の患者さんが失明するわけではありません。進行スピードは個々で違ってきますし、早期発見、早期治療をすればそれだけ失明を免れる可能性は高くなります。
緑内障の発見されるパターンとして多いのが、人間ドックや健康診断で異常を指摘され初めて眼科受診するというものです。
そして眼科で、改めて視力検査、眼圧検査、眼底検査、画像検査、視野検査がおこなわれます。
緑内障の患者さんが視野検査を受ける中で、「自分は検査をうまく出来ているのかな?検査がうまくできなかったら病気と判断されてしまうのではないか?」と不安になる方もいるのではないでしょうか?
今回は視野検査を上手に受けていただくためのコツについて説明します。
視野検査をうける方へ
「緑内障は,視神経と視野に特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である.」
と記載されています。
したがって緑内障の患者さんは視野障害の進行スピードを判定するために定期的に視野検査が必要になってきます。
そのため「視野検査をしましょう」とお話しすると、患者さんは「頑張っていい結果を出そう!」「わたしには見えるから!」と張り切ってしまう方もみえます。
「視野検査をしましょう」
「頑張っていい結果を出そう!」
「わたしには見えるから!」
このように意気込んで視野検査に臨むと、みえないはずの部分でもボタンを押してしまうなど本当の結果が得られないこともあります。
難しいかもしれませんが、視野検査を行うときはできるだけリラックスして正直にボタンを押すことが大切です。
視野検査の信頼性はここを見て判定
緑内障の患者さんの中には、視野検査が苦手で検査後に落胆してしまう方もいます。
確かに視野検査は“片目で10分程度かかる”、“疲れる”、“目が乾いてしまう”など集中力を維持しながら行うのは大変で、うまくできなかった場合もあります。
しかし私たち眼科医はそれらを考慮したうえで視野検査の結果を判定しなければなりません。
視野検査の結果には、患者さんが視野検査をどれだけ上手に受けたかをあらわす指標が3つあります。
<視野検査の結果の例(ハンフリー視野計)>
これらの指標を良くすることが視野検査を受けるコツであり、患者さん側で改善できる場合があります。
固視不良
検査中にどれだけ目を動かしてしまったかを表す指標です。この数値が高ければ、光を探していることになります。
視野検査は真正面の光を見ている状態で検査を行いますが、検査中に目を動かしてしまうと検査の結果が不正確になりますので、検査中は真ん中の光だけ注目してください。瞬きはしても結構ですが、決して光を探さないようにしましょう。
偽陽性
光が見えていないのに誤ってボタンを押してはいないかを表す指標です。具体的には、視野計が光を出さずに音だけ出したときにボタンを押した回数をカウントしています。
良い結果を出したいと意気込んでいくと、光ではなく音で反応してしまうことがあります。気持ちが前のめりになっていると言えるため、リラックスして光が見えてから押しましょう。
偽陰性
光が見えているはずなのにボタンを押していないことを示す指標です。具体的には患者さんが見えるはずの強さの光を出したのにボタンを押せなかった回数をカウントしています。検査に十分に集中できていないことをあらわします。
検査するのに事前に準備は必要?
視野検査はカーテンなどで仕切られた、暗い部屋で行われなるべく検査に集中できる環境で行っていますが、特に下の3つに注意しましょう。
ピントが合っていない
当然ながら、指標となる光がはっきり見えないことにはボタンは押せません。検査前にしっかり視力の確認をしてもらってください。
姿勢がつらい
椅子やあごの位置の高さが身体に合っていないために姿勢がつらいと検査に十分集中できなくなります。このような場合には、遠慮せず検査員に声をかけてください。
検査中に眠くなってしまう
検査の前日に緊張して眠れなかった、仕事が忙しくて寝るのが遅くなってしまったとおっしゃる患者さんがいます。なかなか難しいとは思いますが、検査の前日は十分に休養をとってください。
まとめ
以上、視野検査をするときのコツについて解説しました。
視野検査はあくまで検査でありテストではありません。良い結果を出そうと思いやみくもにボタンを押すのではなく、姿勢よく、まっすぐ正面を見て、見えたものだけを、あせらず正直に押すことが大切です。また検査は暗室で行われますので前日に十分睡眠・休養をとってから望むのが理想的です。