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目の痛み、頭痛との関係性について

学会・勉強会内容

今回は「目の痛み」について解説していきます。

少し前ですが、眼科の主要学会で、国際医療福祉大学の原先生のご講演内容で、目の痛み、特に片頭痛と眼痛との関係性について非常に勉強になりましたので、抜粋させていただきます。

片頭痛の臨床的特徴

☆片頭痛の有病率と背景について

現在日本において、15歳以上で約8.4%の有病率であり、75%が日常生活に支障をきたすレベルに達することがあります。

 ⇒ このため、労働生産性の低下で経済的損失(2880憶円/年の損失)があるといわれます。

また、50歳以上で日常生活に支障をきたす原因第3位を占めます。

 ⇒ しかし片頭痛が病気であるという認識が低いです(古くから精神論的な見解も未だに残る)

参考ですが、世界各国における片頭痛の有病率はさまざまです。

※世界の片頭痛の有病率

タイ29.1%
ドイツ27.5%
スウェーデン13.2%
米国13.0%
フランス12.1%
台湾9.1%
マレーシア9.0%
中国3.0%

以下に、国際頭痛分類第3版に基づいた臨床的特徴を示します。

頻度 ときどき = 週に2回~月1~2回程度 (どんなに長くても72時間でおさまるもの)
性状 ズッキンズッキン 片側性 歩行や階段上昇で痛み増大 悪心嘔吐
過敏症 過敏症:光56% 音64% 臭47% ⇒片頭痛脳
発症形式 前兆(陽性症状:光が見える  陰性症状:視野欠損 陽性陰性症状:閃輝暗点 )
予兆期 前後に多彩な変調

発症形式に「前兆」とありますが、前兆のある片頭痛は20-30%にとどまり、一方、前兆のない片頭痛は70-80%もあります。

病態生理

発症機序:

Schulter LH, May A. Brain, 2016で1名の片頭痛患者に臭刺激と光刺激を与え脳の活性部位を探索された。

すると脳内では以下のような変化が見られたと報告されていました。

予兆期:視床下部の活性化が見られ、知覚神経である三叉神経との連結が強くなる(発作2日前

発作中:視床下部と橋脊側の活性化される

発作後:視床下部と三叉神経との機能が大きく働く

脳の活性化された部位を解析した結果、視床下部が発症起源ではないか、という報告でした。

片頭痛の病態生理

現在、片頭痛の病態についてさまざまな仮説がありますが、なかでも有力な仮説が、「脳硬膜/三叉神経血管説」というものがあります。

「脳硬膜/三叉神経血管説」

何らかの刺激がGenerator(視床下部脳幹)を刺激し、脳の硬膜に走る血管に分布する三叉神経が刺激され炎症物質(血管作動性物質)が放出される

⇒ 血管が拡張し、神経に炎症が引き起こされる、という説

この「何らかの刺激」が「光」であることもあります。

片頭痛の患者さんは「光」に過敏性を持つことがあり、日常の光に異常に反応してしまうことがあります。

例えば、室内の照明をLEDに変えたところ片頭痛が頻発 ⇒ 白色蛍光灯に戻すと発作が激減されたという例があります。

このような身近には光過敏性を誘発する原因が潜んでいる可能性があり、患者さんへの配慮で症状緩和が得られる場合があります。

では、片頭痛と網膜の関係はどうなっているのでしょうか。

片頭痛と網膜の関係 ~ ipRGCについて~

・網膜には光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)という細胞が存在することが判明(2002年)

失明状態の患者さんにも光刺激で片頭痛誘発されるという報告(2010年)

・ipRGCは視床下部で睡眠・覚醒のリズムの制御している。

 ①上頸部交感神経節から松果体を刺激しメラトニン合成・分泌⇒ 体内時計の同調・睡眠誘導 
 ②毛様体神経節から虹彩を刺激(瞳孔を制御)

⇒  ipRGCは形態覚には関与しない細胞系の経路をたどる、non image forming visual functionという機能をもっている。

ipRGCはブルーライト波長(480 nm)にピーク波長をもつ ※白色電球の波長は420nm

 ⇒ ブルーライトがipRGCを刺激

 すなわち、ブルーライトを遮断することで三叉神経血管炎を抑制することが大切と考えられています。

※慢性片頭痛:月に15日以上、3か月以上持続する頭痛

⇒ 重篤化すると皮膚アロデニア(皮膚異常症):髪をブラッシング、頭皮に触れる、ひげをそる、メガネ・コンタクトを着用するなどができなくなるものもあります。

予防、遮光

光刺激に過敏である片頭痛の予防には遮光が重要です。

①遮光の必要性

片頭痛にたいして遮光眼鏡軽減される結果が1991年から多数報告されています。

特に中間色(緑色~黄色)の遮光眼鏡(”MG” や ”FL”)、で頭痛が軽減されます。(しかし色が難点)

では色による頭痛の誘発はあるのでしょうか?

誘発+青(480nm)・黄色・赤(610nm)
誘発-緑(550nm)

このように青や黄色・赤は頭痛を誘発させてしまいます。

そのため、ブルーライトカットは頭痛を軽減させる研究が報告されました。また、片頭痛用のナイトドライブレンズ(東海光学(株)製)もあり夜間の運転でも頭痛日数・程度軽減、服用日数が減少されるそうです。

②読書ツール

読書ツールとしてiPaDとKindleとの比較がなされています。

iPadLED+20-30分で光過敏が出現
Kindlee-ink (ブルーライトなし)長時間読書が可能

iPadでは光刺激により心拍変動が多くなり交感神経指標が上昇するが、一方Greenの眼鏡(東海光学)を装用すると交感神経指標の上昇が抑えられ、光刺激による片頭痛の発症を抑えられる可能性を示唆されていました。

③室内への対応

兆候のできるタイプの証明器具、内装は緑をつかったものとなど 色彩を考慮すると良いかもしれません。

まとめ

今回は眼科の主要学会で、目についての多くの学術研究発表がある中で、片頭痛で悩まされている患者さんに焦点を当てるという、通常とは異なる目線での講演を聞き、非常に勉強になりました。

すこし難しい内容もありますが、まとめますと

  ・片頭痛患者さんには前兆がないパターンもある。
  ・片頭痛の発症には視床下部が大きく関与している。
  ・片頭痛患者さんには光刺激で誘発される人もある。
  ・ブルーライトカットで片頭痛が抑制されることもある。
  ・片頭痛患者さんは日常生活の中で光刺激を抑えるための対策することも大切である。

学会の講演でも議論がありましたが、GIGAスクール構想が始まっていく中で、大人だけでなく子どもブルーライトに暴露される機会が多くなり、頭痛を発症する子どもも増えてしまうのではと心配になってきます。

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