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加齢黄斑変性 ~新ガイドライン その変更点とは?~

おしらせ

2024年に加齢黄斑変性診療ガイドラインが更新され、新生血管型加齢黄斑変性(以下、nAMD)の診療に関する新たな知見や推奨が盛り込まれました。ここでは、医療従事者でない方にもわかりやすい形で、今回の変更点とその背景を解説します。


1. 新生血管型加齢黄斑変性とは

AMDは、加齢に伴って黄斑(網膜の中心部)がダメージを受ける病気です。黄斑は、ものを見るときに非常に重要な役割を果たす部分で、AMDが進行すると視力が低下し、最悪の場合には失明に至ることもあります。

新生血管型AMDは、網膜の下もしくは中に異常な血管(新生血管)が発生し、これが出血や腫れを引き起こすタイプです。これにより視力が急激に悪化することがあります。


2. 更新された診療ガイドラインの主な変更点

用語の変更

これまで”浸出型加齢黄斑変性”と呼ばれていたものが、新ガイドラインでは”新生血管型加齢黄斑変性(nAMD)”と改められました。さらに、新生血管を指す用語として”脈絡膜新生血管”(CNV)が”黄斑新生血管”(MNV)に変更されました。

背景: この変更は国際基準に準拠したもので、病気の実態をより正確に表現することを目的としています。新しい用語”黄斑新生血管”は、黄斑で発生するすべての異常血管を包括的に指しています。

病期分類の見直し

従来の分類に加え、早期、中期、後期、末期という段階が明確化されました。これにより、病気の進行具合に応じた治療計画が立てやすくなりました。

さらに、新しいガイドラインでは、中心性漿液性網脈絡膜症や脈絡膜の厚い症例、色素上皮異常を伴う症例が”パキコロイド”として分類され、新生血管型AMDの初期病態として含められています。

なお、新たなガイドラインでは50歳以上という年齢制限が撤廃されています。

日眼会誌128巻9号より引用

黄斑新生血管(MNV)の分類

MNVは以下のように分類されています:

  1. 1型: 病変が網膜色素上皮の下に存在(ポリープなし、ポリープあり)。
  2. 2型: 病変が網膜色素上皮と網膜の間に存在。
  3. 1+2型(混在型): 1型と2型が混在したタイプ。
  4. 3型: 従来CNVの特殊型とされていた網膜血管腫状増殖(RAP)。

新たな治療法の推奨

最新の治療薬や方法が推奨リストに追加されました。特に注目されているのは以下の項目です:

  1. 抗VEGF薬治療: VEGF(血管内皮増殖因子)を抑える薬を硝子体(目の内部)に注射する方法です。これにより新生血管の成長を抑え、視力の改善や維持が期待できます。 多数の研究が世界中で行われた結果、抗VEGF薬の定期的な注射が視力を維持するためにいかに重要であるかを証明されています。また、抗VEGF治療では多くの薬剤が開発されていますが、効果が乏しい場合(治療抵抗例)や効果が減弱した場合(耐性の獲得)には、他の薬剤への切り替えが有効であることがあります。
  1. 光線力学的療法(PDT): 特定の光を照射し、異常な血管を閉じる治療法です。抗VEGF薬との併用が推奨されています。

生活習慣の改善推奨

ガイドラインでは、患者さん自身が取り組むべき生活習慣の改善についても強調されています。例えば:

  • 禁煙: 喫煙はAMDの大きなリスク因子です。タバコを吸うことで、目の血管が傷つき、病気が悪化しやすくなります。
  • 食生活の改善: ルテインやゼアキサンチンを含む食品(例えば緑黄色野菜)を積極的に摂取することで、黄斑の健康を保つ効果が期待されています。しかし緑黄色野菜の実際に摂取すべき量は非常に多いため、AREDSの研究に基づき、初期から中期の加齢黄斑変性や片目に既に発症している方の反対目の発症予防にはサプリメントでの摂取が推奨されています。

3. 患者さんへのメッセージ

AMDは早期発見が非常に重要です。視力低下が始まった段階で速やかに治療を開始すれば、視力を大幅に維持できる可能性が高まります。以下のような症状が見られた場合は、すぐに眼科を受診してください:

  • 視界の中心がぼやける
  • 直線が歪んで見える
  • 明るさや色の見え方が変わる

また、定期的な目の検査も重要です。また、生活習慣の改善も病気の進行を抑える助けとなります。

当院では、最新の知識で患者さんの目の健康を守るお手伝いをいたします。一緒に適切な治療計画を立て、健康な視界を維持しましょう。

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