緑内障に対するレーザー治療について、中でも選択的レーザー繊維柱帯形成術(SLT)について解説します。
緑内障の治療法について
<点眼薬>
一般的な治療法ですが生涯にわたって点眼を続ける必要があります。時に副作用が原因で使用できない場合があります。
<レーザー治療>
レーザー治療(SLT)は合併症の少ない治療法で、どの過程においても選択が可能な治療です。効果がない場合もあります。
<外科的手術>
点眼薬やレーザー治療によって目標眼圧に到達できずそのままでは進行のリスクが非常に高い場合に選択されることが一般的です。
SLTとはどんな治療ですか?
SLTとは選択的レーザー繊維中体形成術(selective laser trabeculoplasty)のことで眼圧を低下させる効果の高いレーザー治療方です。
このレーザーは、低エネルギーので短パルスを防水の流出経路である繊維柱帯に照射します。
この処置により体内の自然治癒反応が引き起こされ房水の排出機能が改善し眼圧を下げます。
非常に低出力であるため眼内構造に損傷を及ぼす事はなく、ほとんど痛みを感じません。
※SLTは外来手術扱いなので民間の医療保険の給付対象になることが多いです。
どんな方が対象になりますか?
① 点眼のみでは緑内障の悪化が防げない方
② 妊娠・授乳中や点眼の副作用のため点眼治療の継続が難しい方
③ 点眼を忘れてしまう方、毎日の点眼が苦痛な方
④ 仕事が忙しく複数の点眼が困難な方
が対象となります。
第一選択治療としてSLTを選んだ場合のメリットは?
1回のレーザー治療で2〜3年間効果が持続しますので点眼治療のような紛らわしさは入りません。
また、2〜3回繰り返し治療が可能なためしばらくの間、点眼なしで管理できる方もいます。
ただし効果に個人差がありますのでレーザー治療後に十分な眼圧下降効果が認められなければ、点眼治療など別の治療を追加する必要があります。
報告は様々あり約2〜6㎜Hgの眼圧下降効果があるとされ、眼圧下降が成功するのは約60~80%と言われます。また眼圧が高ければ高いほど効果があり、10mmHg以上低下する報告もあります。
しかし上述しましたように効果が出ない方もいたり、長期的には点眼再開が必要な症例が一定数います。
参考: 緑内障に対するレーザー治療法(監修 福井県済生会病院 眼科 新田耕治先生)
<効果、安全性についての近年の報告例>
718人の開放隅角緑内障・高眼圧症の患者さんを、緑内障点眼群362人(622眼)・SLT群356人(613眼)の2グループにわけて3年間検討。
・SLT群74%では、3年間点眼なしで眼圧コントロールが可能。
・医療費の面でも、すべての点眼を継続しているより費用対効果が改善。
Gazzard, G. et al. Selective laser trabeculoplasty versus eye drops for first-line treatment of ocular hypertension and glaucoma (LiGHT): a multicentre randomised controlled trial. The Lancet 393, 1505–1516. 2019. (有名海外雑誌ランセットの記事)