北大 石田晋先生
加齢黄斑変性の治療薬
加齢黄斑変性に対する治療薬としてベバシズマブ(アバスチン)、ラニビズマブ(ルセンティス)、アフリベルセプト(アイリーア)が現在硝子体注射治療薬として存在します。
そこに2020年の新治療薬としてブロルシズマブ(ベオビュ)が登場しました。
新治療薬ベオビュのメリット
臨床試験でアフリベルセプト0.5㎎にたいしてブロルシズマブ6㎎で比較試験を行ったところ、初回3回毎月治療後、アフリベルセプトでは2か月に1度、ブロルシズマブ(ベオビュ)においては3か月に一度の硝子体注射治療となります。
つまりは、「硝子体注射の効果が長引き、治療回数を減らすことができる」ということです。
その理由は簡単に言うと、アフリベルセプト(アイリーア)のより細かい分子成分の部分のみを使用した薬剤となっているためです。
新治療薬ベオビュのデメリット
しかし、非常に重大な副作用が報告され始めてきました。
”網膜血管炎”という影の部分が報告され始めました。
・海外で臨床的に外部組織で調査行ったところ1088眼で50眼(4.6%)で何かしらの眼内炎症を起こしていたことが判明(一方アフリベルセプトでは729眼で8眼に起きていた)。
・日本人ではブロルシズマブ(ベオビュ)で101眼で13眼(12.8%)で眼内炎症が起きていた。うち1眼で大幅な視力低下を示した。
アメリカの有名の先生は製薬会社に一度、製造中止を要求している。それはリスクとベネフィットが合致しないと考えられた。
ブロルシズマブ(ベオビュ)の合併症
ではどのような眼底変化が起こるのか
例
投与後2週間で視力低下、飛蚊症、豚脂様角膜後面沈着物、動脈壁の白線化、静脈閉塞、出血
蛍光眼底造影でBoxcarring(分節状の動脈閉塞)
合併症に対するフローチャート
①ブロルシズマブ(ベオビュ)を中止
②ステロイド治療を開始(点眼、注射、、内服)
※ぶどう膜炎とは異なる所見
急性網膜壊死のような重篤なウィルス網膜炎に分節状の血管閉塞は起こることは考えられるが、網膜へのダメージが少ない(北大南場先生)Boxcarring(分節状の動脈閉塞)ことからANCA関連網膜症(分節状の血管炎)、Wegener肉芽腫のような所見ともとれる
→抗体の異常産生による血管炎
危険因子は?
患者血清に抗ブロルシズマブ抗体が存在するか調査したところ、女性や日本人という特徴がオッズ比が高く、それらが抗体産生による合併症の発症の危険因子である可能性が示唆された。
一方、抗体誘導が合った症例の12%に眼内炎症を発症したが、眼内炎症の発症した症例の27%に抗体誘導がない
→つまり抗ブロルシズマブ抗体のような免疫学的な反応以外の因子が眼内炎症を発症している可能性がある
まとめ
ブロルシズマブ(ベオビュ)はラニビズマブ(ルセンティス)や(アイリーア)より効果が長期持続し、治療回数を減らすことのできる加齢黄斑変性の新治療薬です。
しかし、そのリスクは低いと言えど重篤な合併症をきたす可能性があります。
投与を受ける場合には、よくそのリスクを主治医に確認するべきと考えます。