「近視があるけれど、見えているから大丈夫」
そう思っていませんか?
近年、日本人を対象とした全国規模の多施設研究により、近視、とくに強度近視の方では、緑内障の発症リスクが高く、さらに手術が必要になる可能性も高いことが明らかになりました。
さらに、私自身も先日、名古屋で開催された眼科セミナーに参加し、
近視に伴う視神経障害の診断や治療について、改めて考えさせられる機会がありました。
このページでは、最新の研究結果と、日常診療・学会講演での知見を踏まえながら、
近視と緑内障の関係、そして今後私たちが何に注意すべきかを分かりやすく解説します。
全国多施設研究で分かった「近視と緑内障」の関係
京都大学眼科を中心とした研究グループは、日本全国の医療データを用いて、約1,400万人以上を対象とした大規模な解析を行いました。
その結果、以下のことが明らかになっています。
- 近視(-0.5 Dより近視が強い)のある方
→ 緑内障発症リスクが約1.4倍 - 強度近視(-6 Dより近視が強い)の方
→ 緑内障発症リスクが約2.7倍 - 強度近視では緑内障手術リスクが約3倍以上
これは、近視が単なる屈折異常ではなく、**将来的な視神経疾患と深く関係する「眼の構造的リスク」**であることを示しています。
近視性視神経症と正常眼圧緑内障 ― 鑑別と合併の難しさ
名古屋の眼科セミナーでは、
近視性視神経症と正常眼圧緑内障の鑑別、
両者が合併した場合の診断や治療、手術適応の判断の難しさについての講演が行われました。
近視、特に強度近視では、
- 年齢とともに網膜・視神経が引き伸ばされている
- OCTや視野検査の解釈が難しい
といった理由から、
「これは近視による変化なのか」「緑内障として進行しているのか」
の判断が容易ではありません。
また実臨床では、
近視性視神経症と正常眼圧緑内障が合併しているケースも少なくなく、
進行例では点眼治療だけでなく手術が必要になることもある、という点が強調されていました。
これらの講演を通じて、
近視が強い眼ほど、より慎重で継続的な経過観察が必要であることを改めて実感しました。
今後も進む「近視・病的近視」の研究
近視、とくに病的近視に関しては、
今後も視神経障害、緑内障、網膜疾患との関連について、さらなる研究が進むと考えられます。
今回の全国多施設研究や、学会・セミナーでの議論は、
**近視を「放置してよいもの」ではなく、「生涯にわたって管理すべき眼の状態」**として捉える重要性を示しています。
小児期からの近視抑制治療の重要性
こうした流れの中で、特に重要だと感じるのが、
子どもの頃からの近視進行抑制治療です。
近年、低濃度アトロピン点眼(リジュセアなど)を用いた近視抑制治療が普及し、
- 眼軸長の過度な伸長を抑える
- 将来的な強度近視を減らす
- 緑内障や網膜疾患のリスク低減につながる可能性
が期待されています。
将来の視神経疾患リスクを減らすという意味でも、近視抑制治療は非常に重要な取り組みだと、改めて感じました。
40歳以上では「症状がなくても眼科健診を」
一方で、すでに近視がある成人の方、特に40歳以上の方では、
- 視力が良い
- 見えにくさを感じない
という理由だけで眼科受診を控えてしまうのは危険です。
緑内障は、自覚症状がないまま進行する病気です。
特に近視眼では、その変化に気づきにくいことがあります。
40歳を過ぎたら、
- 眼圧検査
- 視神経の評価
- 視野検査やOCT検査
を定期的に受けることが、将来の視野を守る第一歩です。

まとめ|近視のある方、そして保護者の方へ
- 近視、とくに強度近視は緑内障の重要なリスク因子
- 近視性視神経症と緑内障は鑑別・合併に注意が必要
- 小児期からの近視抑制治療は将来への投資
- 40歳以上では症状がなくても眼科健診を
近視は「見え方の問題」だけではありません。
将来の視機能を守るために、年齢に応じた適切な管理と検査を行いましょう。
小児の近視抑制治療から、成人・高齢期の視神経管理まで、
ライフステージに応じた眼科診療を行うことが重要です。










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