こどもの近視とは?
🔹 子どもの近視が増えている理由
近視とは、遠くのものがぼやけて見える屈折異常の一つで、多くは眼軸(目の奥行き)が伸びることで起こります。現代の生活環境により、子どもたちの視覚環境が近方中心になり、以下のような理由から低年齢から近視が進行しやすくなっています:
- スマホ・ゲーム・タブレットの長時間使用
- 学校や塾、習い事で近くを見る作業の増加
- 屋外活動時間の不足(特に日光を浴びる時間が短い)
🔹 子どもの近視が問題となる理由
強度近視になると将来的なリスクが高まる
近視の度数が強くなりすぎると、以下のような眼疾患のリスクが高まります:
- 網膜剥離 (発症リスク:10~20倍)
- 緑内障 (発症リスク:2~4倍)
- 黄斑変性(近視性脈絡膜新生血管) (発症リスク:7~40倍)
近視は「治す」のではなく「進行を抑える」時代へ
近視は治すことのできない病態でメガネやコンタクトは視力を矯正する手段です。近年では、「子どものうちから進行を抑える治療」を積極的に行うことが世界的なトレンドとなっています。
低濃度アトロピン(リジュセア)とは?
アトロピンは従来、散瞳や調節麻痺のために使われてきた点眼薬です。近視抑制目的では、非常に薄めた濃度(0.025%)のアトロピンを毎晩1回点眼することで、副作用を最小限にしながら、近視進行を穏やかに抑制する効果が報告されています。
- 毎日1回、就寝前に点眼
- 近視進行を約50〜60%抑制する報告あり(屈折値・眼軸長の両面から)
- 副作用が極めて少なく、瞳孔径やまぶしさの変化は最小限
治療の対象となるお子さま
以下のようなケースで、治療適応とします。
- 5歳以上のお子さま
- 治療スケジュールに従った通院・定期検診が可能な方
- 医師により適応と判断された方

治療スケジュール(リジュセアの流れ)
時期 | 内容 |
初診 | 屈折検査、眼軸長測定、問診を行い、治療適応を判断 |
治療方法 | リジュセアを1日1回点眼 (就寝前) |
1か月後 | 初期の副作用や点眼状況の確認 |
以降3〜4か月ごと | 眼軸長・屈折度数を測定し、進行の有無を評価 |
治療費用について(自由診療)
リジュセア点眼は治療をご希望された時点から保険適用外の自由診療となります。
内容 | 費用(税込) |
リジュセア点眼薬(約1か月分) | 4,380円 |
定期検査(3~4か月ごと) | 2,000円 |
よくあるご質問(FAQ)
Q. 目薬で副作用はありませんか?
A. 5%以上の方に羞明(まぶしさ)が認められています。また、霧視(かすみ目)や調節障害(近くが見えにくい)などの症状も報告されています。症状が持続する方は医師と相談ください。まれに軽いアレルギーや違和感が出ることがあります。
Q. 効果がすぐに出ますか?
A. 数か月~1年単位で「近視が進みにくくなる」効果が期待される治療です。完全に進行を止めるものではなく、進行をゆるやかにする治療です。
Q. 中止したらどうなりますか?
A. 途中で急に中止すると「リバウンド」により一時的に進行が加速することがあります。
ご家庭でできる近視予防・併用ケア
リジュセア点眼もある程度効果を期待できますが、以下のような生活習慣の改善も近視進行予防が最も有効とされています:
- 🌞 1日2時間以上の屋外活動(自然光を浴びることがポイント)
- 📱 スマホ・ゲーム、📖 勉強・読書は 30~40分ごとに休憩を入れる
- 💡 十分な照明で読書・学習を行う
- 🛏 十分な睡眠(成長ホルモンの正常な分泌と関係)
※日本眼科学会 「近視進行抑制について」 をご参考ください