Ⅰ なぜ眼科受診が必要なの?
学校の視力検査は「スクリーニング検査」であり、裸眼視力のみを測定しています。正しい視力や目の健康状態を知るには、眼科での詳しい検査が必要です。その理由は次の通りです。
● 学校での検査は簡易的
- 測定は「1.0・0.7・0.3」の3種類の視標のみで行われます。
- 判定基準: (黒板の文字が前の席で見える=0.3 後ろの席で見える=0.7とする)
- A:1.0がみえる
- B:0.7がみえるが、1.0はみえない
- C:0.3がみえるが、0.7はみえない
- D:0.3がみえない
● 正確な評価には眼科での検査が必要
- 裸眼視力だけでは本当の視力は分かりません。
- 正しく近視・遠視・乱視などをレンズで矯正して初めて「矯正視力」を測れます。
- 調節けいれん(一時的に近視が強く見える状態)の可能性もあるため、点眼薬で検査を行うことがあります。
● 発達段階に応じた管理が重要
- 6歳で両眼とも1.0が目安。健全な視力発達には早期発見とケアが必要です。
(2023年より6月10日が「子どもの目の日」に制定されました。)
Ⅱ 子どもの近視はなぜ増えているの?
● 近視の増加は深刻
文部科学省の近視実態調査(2021年)では、裸眼視力1.0未満の割合は小学生で32.9%、中学生で54.9%。年齢が上がるにつれて近視が進行する傾向があります。
● 原因は「環境因子」が大きい
- 長時間のスマホやパソコンなどデジタル端末の使用のような「近くを見る作業(近業作業)」が問題。
- 目に負担をかけない習慣が大切です。
● 近視進行を防ぐ生活習慣
- 作業距離は 30cm以上 離す
- 30分作業したら 5m以上離れたものを20-30秒以上見る(30-30-30のルールと呼ぶ)
- 読書は750ルクス以上の明るさで(デスクライト併用が理想)
- 1日2時間以上の外遊びが推奨
(米国の研究では近視の進行が3分の1以下に減ったという報告があります。)
- 「バイオレットライト(太陽光)」が近視進行を抑える可能性があります
● 近視は「治す」より「進行を抑える」時代へ
- 近視を治すことは困難で進行防止として様々な治療法が試みられています。
- 低濃度アトロピン点眼は長期予後が不明であり、ナイトレンズ(オルソケラトロジー)は感染症から失明するリスクがあり、注意が必要です(いずれも自費診療です)
- 最も簡単で誰にでもできるのが日常生活の見直し(近業作業での注意と屋外生活の推奨)と早期受診です。
Ⅲ 見づらくなったらどうすればいい?
● メガネ・コンタクトの使用が必要
- 黒板が見えにくくなったら、適切な眼鏡・コンタクトレンズで視力矯正が必要です。
- まずは眼科で正確な検査を受け、眼鏡処方箋を発行してもらった後に処方箋をもってメガネ屋さんへいくのが良いでしょう。
● メガネを作るときのポイント
- 本人が気に入ったデザインを選ぶと継続して使いやすい
- 耐久性・安全性
- 鼻パッドの当たり具合や顔へのフィット感も重要
- 瞳孔の位置とレンズの中心が一致 (瞳孔距離とレンズの中心距離が一致) しているか
- 「目とレンズの距離(頂点距離)」が離れすぎていないかも要確認


● メガネができたら再チェック
- かけ心地や見え方を確認し、処方通りにできているか眼科で確認しましょう。
メガネのお手入れと使用上の注意点
- メガネは両手でつるを持ってかけ外ししましょう
- 外すときはレンズの凸面を上に向けて置く
- 汚れた時はメガネ専用クリーナーや水洗い後ティッシュで拭く
- 鼻パッドやつるのゆがみは、定期的に調整を
- 弱視や視力低下がある場合は定期的な眼科受診を
学校医 窪田眼科医院 窪田智、窪田匡臣
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