糖尿病と白内障の関係について
糖尿病は全身にさまざまな影響を及ぼす病気ですが、その中でも目の健康に大きく関わる疾患の一つが「白内障」です。本記事では、糖尿病と白内障の関係について、一般の方にも分かりやすく解説します。
白内障とは?
白内障とは、目の中にある「水晶体(すいしょうたい)」というレンズの部分が濁る病気です。健康な水晶体は透明で、光をしっかりと通すことで鮮明な視界を提供します。しかし、白内障になると水晶体が濁ってしまい、視力の低下やかすみ目などの症状が現れます。
糖尿病とは?
糖尿病は、血糖値が慢性的に高くなる病気です。血糖値を調整するホルモン「インスリン」の働きが不十分になることで、血中のブドウ糖が適切に利用されず、血糖値が高くなります。糖尿病は、進行すると神経障害、腎障害、網膜症など、さまざまな合併症を引き起こすことが知られています。
糖尿病が白内障を引き起こすメカニズム
糖尿病の患者さんは、健康な人と比べて白内障を発症しやすく、進行も早い傾向があります。これにはいくつかの要因が関係していると言われています。
(1) 高血糖による水晶体タンパク質の変性
高血糖の状態が続くと、水晶体の中にあるタンパク質が糖と結びつき(糖化)、変性します。この変性が進むと、水晶体の透明性が失われ、白内障が発症します。
(2) ソルビトールの蓄積
ブドウ糖が体内で代謝される際、「ソルビトール」という物質が生成されます。通常であればソルビトールは速やかに分解されますが、糖尿病の方はこの代謝がうまくいかず、水晶体内にソルビトールが蓄積します。ソルビトールは水分を引き寄せる性質があるため、水晶体がむくみ、透明度が低下して白内障が進行しやすくなります。
(3) 酸化ストレスの影響
糖尿病では、体内の「酸化ストレス」が増加します。酸化ストレスとは、活性酸素の影響で細胞がダメージを受ける状態のことを指します。水晶体の細胞がこのダメージを受けると、透明性が失われ、白内障が発症・進行しやすくなります。
糖尿病による白内障の特徴
糖尿病による白内障は、一般的な加齢による白内障と異なる特徴があります。
- 若い年齢でも発症しやすい
通常、白内障は加齢とともに発症しますが、糖尿病の方は40~50代の比較的若い年齢でも発症しやすくなります。 - 進行が早い
糖尿病患者さんの白内障は、一般的な白内障よりも進行速度が速く、視力の低下が急速に進むことがあります。
糖尿病白内障の予防と対策
糖尿病があるからといって、必ずしも白内障になるわけではありません。適切な管理と予防策を取ることで、リスクを抑えることができます。
(1) 血糖値の管理
血糖値を適切にコントロールすることで、白内障の発症リスクを下げることができます。医師の指導のもと、食事療法・運動療法・薬物療法を組み合わせて血糖値を安定させましょう。
(2) 定期的な眼科検診
白内障はゆっくりと進行するため、初期の段階では気づきにくいことがあります。糖尿病の方は年に1~2回の眼科検診を受け、白内障の早期発見・治療につなげることが重要です。
(3) 抗酸化作用のある食品を摂取
ビタミンCやビタミンE、ルテイン、ゼアキサンチンなどの抗酸化作用を持つ成分は、水晶体の酸化ストレスを軽減し、白内障の予防に役立ちます。これらの栄養素を多く含む食品(緑黄色野菜、ナッツ類、柑橘類など)を積極的に摂ることをおすすめします。
(4) 禁煙と適度な紫外線対策
喫煙は酸化ストレスを増加させ、白内障のリスクを高めます。禁煙を心がけることでリスクを減らせます。また、紫外線も白内障の進行に影響を与えるため、外出時にはサングラスや帽子を着用しましょう。
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白内障の治療
白内障が進行し、日常生活に支障をきたす場合は、手術が必要になります。
(1) 白内障手術の方法
現在の白内障手術は、「超音波乳化吸引術」と呼ばれる方法が一般的です。濁った水晶体を超音波で細かく砕いて吸引し、代わりに人工の眼内レンズを挿入することで視力を回復させます。
<白内障手術についてはこちら>
(2) 糖尿病患者さんの白内障手術の注意点
糖尿病の方は、白内障手術後に感染症や眼内炎のリスクがやや高まります。また術後に急激に糖尿病網膜症が悪化し、緑内障となってしまう場合もあるため、手術前後の血糖管理や点眼治療が非常に重要となってきます。手術を受ける際は、眼科医と糖尿病専門医と相談しながら、適切な時期を決めることが推奨されます。
まとめ
糖尿病は白内障の発症リスクを高め、進行を早める要因となります。しかし、適切な血糖管理や予防策を取ることで、そのリスクを抑えることが可能です。定期的な内科検診に加ええ、血糖値・HbA1Cのコントロールを十分にしていただき、眼科検診も受け、早期発見・早期治療を心がけることが大切です。糖尿病をお持ちの方は、ぜひ日頃の生活習慣を見直し、目の健康を守りましょう。
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